2014年04月13日

持久系アスリートに対するストレングス&コンディショニング

●最大有気的能力について


最大有気的能力の指標となる最大酸素摂取量は、長距離走競技パフォーマンスを向上させる要因であるが、それは絶対的要因ではなく一要因に過ぎない。


そのことは、同一水準の高い最大酸素摂取量を有する競技者間においても、競技パフォーマンスに差がみられることもあり、運動中、乳酸を蓄積せずにいかに高い強度の運動を遂行できるかという能力も長距離走競技パフォーマンスを決定する重要な要因であることが報告されている(LaFontaineら, 1981)ことからも理解出来よう。


さらに、走距離が長くなるにつれて最大酸素摂取量よりも乳酸性作業閾値や血中乳酸蓄積開始点、等の最大下能力との相関関係が高くなることが示されている(Tokmakidisら,1998)。


これらのことから、走距離の異なる競技においては、その競技パフォーマンスに大きく関与する生理学的要因が異なることを理解することが出来る。


従って、目標とするレース距離に応じて向上させるべき生理学的要因は異なるとも言えるのだが、レース距離に関わらず競技中の酸素摂取水準という側面から考えれば、最大酸素摂取量を向上させることは極めて重要であると考えられる。


いわゆるエリートランナーのマラソンレース中における酸素摂取水準は約85%程度であるといわれている(石井,2011NSCAジャパン総会基調講演)が、競技パフォーマンスを向上させる上では、競技中の酸素摂取水準を向上させる、すなわち、最大下能力を向上させる、あるいは、最大酸素摂取量を向上させる、すなわち、最大有気的能力を向上させる、という2つの戦略が考えられる。


もちろん、その両要因を向上させることが望ましいといえる訳だが、最大有気的能力を向上させるためのトレーニングは高強度トレーニングとなり、最大下能力を向上させるためのトレーニング強度と異なる。すなわち、最大下能力を向上させるトレーニングを実施しても最大有気的能力を効果的に向上させることは出来ないといっても過言ではない。


従って、何より最大有気的能力、すなわち最大酸素摂取量は高めるだけ高めておくに越したことはないといえよう。


そして、一般市民ランナーにおいては、最大酸素摂取量の向上を目的としたトレーニングが圧倒的に欠如していることを付け加えておきたい。


参考文献:
LaFontaine, T. P., Londeree, B. R., and Spath, W. K. The maximal steady state versus selected running events., (1981) Med Sci Sports Exerc, 13, 190-3.

Tokmakidis, S. P., Leger, L. A., and Pilianidis, T. C. Failure to obtain a unique threshold on the blood lactate concentration curve during exercise., (1998) Eur J Appl Physiol, 77, 333-42.
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持久系アスリートに対するストレングス&コンディショニング

日本ストレングス&コンディショニング協会機関誌,Vol.21,No.3,2014
「長距離ランナーのための有酸素性能力トレーニング:伝統からの脱却
-Training the Aerobic Capacity of Distance Runners: A Break From Tradition-」Anthony Nicholas Turner MSc, CSCS


個人的には、非常に興味深い記事であると考える。


そこで、上記記事に関連し以下に長距離走競技パフォーマンスに関係する生理学的要因について、特に最大有気能力に着目した先行研究を記載してみたい。


長距離走競技パフォーマンスを決定する要因について、古くから最大酸素摂取量に代表される最大能力に着目したものや乳酸性作業閾値(LT)に代表される最大下能力に着もしたものを中心に数多くの検討が行われているが、長距離走競技においてはそのエネルギー供給が主に有気的に行なわれるために,最大酸素摂取量が競技成績を決定する重要な要因の一つであることが報告されている(SjodinとSvedenhag,1985)。


一流ランナーの最大酸素摂取量は70〜85 ml/kg/minにも達することが報告されており(Boileauら,1982)長距離走競技パフォーマンスと密接な関係にあるといえるが、最大酸素摂取量を測定するために用いられる漸増負荷走運動テストにおいて疲労困憊に至った時点の走速度、すなわち最高走速度が最大酸素摂取量よりも長距離走競技パフォーマンスと密接な関係にあることが報告されている(Noakesら,1990)。


また、最高走速度などを用いた高強度ランニングにおいて疲労困憊に至るまでの時間(Time to exhaustion)が長距離走競技パフォーマンスを評価する方法として用いられている(Billatら,1994)。


これらのことから、いずれにしても長距離走競技パフォーマンスを向上させるためには、まず競技者自身の最大有気的能力を高める必要性があるといえる。


参考文献:
Sjodin, B., and Svedenhag, J. Applied physiology of marathon running., (1985) Sports Med, 2, 83-99.

Boileau, R. A., Mayhew, J. L., Riner, W. F., and Lussier, L. Physiological characteristics of elite middle and long distance runners., (1982) Can J Appl Sport Sci, 7, 167-72.

Noakes, T. D., Myburgh, K. H., and Schall, R. Peak treadmill running velocity during the VO2 max test predicts running performance., (1990) J Sports Sci, 8, 35-45.

Billat, V., Renoux, J. C., Pinoteau, J., Petit, B., and Koralsztein, J. P. Reproducibility of running time to exhaustion at VO2 max in subelite runners., (1994) Med Sci Sports Exerc, 26, 254-7.
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2014年04月12日

持久系アスリートに対するストレングス&コンディショニング

私は大学卒業後、約10年間に渡りトライアスロン競技に取り組んできました。


今から約20年程前、私がトライアスロン競技に取り組み始めた当時は、インターネットも普及しておらず、トライアスロン競技に関するトレーニング(練習)の情報を国内唯一のトライアスロン競技専門誌と、海外のトライアスロン競技専門誌から収集し、試行錯誤しながら日々トライアスロンのトレーニング(練習)に打ち込んできました。


その結果として、有酸素性持久力の指標の一つである最大酸素摂取量は、ベスト時において70ml/kg/min、平均値としても65ml/kg/minにまで到達し、エリートランナーとしての一つの関門であるとも言えるフルマラソンレースにおけるサブスリーを4度達成するまでパフォーマンスの向上が見られました。


しかしながら、トレーニングに関する知識を充分に有していない当時の私は、非効率なトレーニングを実施していた事も否めず、オーバートレーニング(症候群)に陥るといった様々なトラブルを引き起こした事もあり、その事が、筑波大学大学院に進学し、持久系運動時における疲労に関する研究に取り組むきっかけとなりました。


筑波大学大学院では、持久系運動時における疲労の要因を新たなる視点から捉える事で、持久系スポーツパフォーマンスに関与する新たな要素を明らかにしようと検討を重ねましたが、修士課程という事もあり充分な研究活動を遂行するに至りませんでした。


修士課程修了後、パーソナルトレーナー、S&Cスペシャリストとしての活動を重ねていく過程で、国内トップランナーから一般市民ランナーまで、様々な競技レベルのランナーやトライアスリートと接する中で、今だに競技経験者の経験則や感覚に頼っただけのトレーニング(練習)が横行し、また、いわゆる「補強トレーニング」とか「筋トレ」とか称されるウエイトトレーニング(のようなもの)が実践され、持久系アスリートに対するストレングス&コンディショニングという考え方は皆無に等しい状況である事実を認識するに至りました。


もちろん、私がパーソナルトレーナー、S&Cスペシャリストととして駆け出しの頃はランナーやトライアスリート等の持久系アスリートに対して充分なストレングス&コンディショニングプログラムを提供出来ていたとは言えませんが、様々な学びの機会や経験を経て、充分なストレングス&コンディショニングプログラムが提供出来るようになると、これまでの自分自身のバックグラウンドである持久系スポーツに対する恩返しの意味を込め、持久系アスリートに対して、科学的根拠に基づく適切なトレーニング(練習)、正しいストレングス&コンディショニングを提供して行かねばと考えるようになりました。


そこで、今後、持久系アスリートに対するストレングス&コンディショニングを普及させるべく様々な形で情報発信をしていきたく考えております。


競技レベルを問わず全ての持久系アスリートの皆様、是非ともご期待下さい!
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